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歯の根の治療とはなんでしょう?
2023年10月10日
歯医者さんで説明を受ける「歯の根の治療」という言葉。治療経験がある方には、よく耳にする言葉であり、説明が単純ですむケースが多いのですが、歯医者さんに来られる方で、治療経験があまりない方だと耳慣れない言葉のようです。一般的に、予防の知識が定着してきたことで、大人になるまで歯の治療経験がほとんどない方、いわゆる「初めて」の方に説明するケースが増えています。また、コロナ禍が3年近く続いてしまったことで、歯科医院に来るタイミングを逸してしまい、初めての虫歯治療なのに、「根の治療まで必要になってしまっている」という患者さまに出会うことが最近多くあります。歯科医側からすると、このくらい知っていてほしいなという知識を解説したいと思います。
「歯の根の治療とは何ですか?」歯は、根っこ(歯根・しこん)という部分と口腔内にみえている部分(歯冠・しかん)という部分に分かれて呼び名があります。歯は歯槽骨という歯根をとりまく骨に埋まっており、その上に歯肉(歯ぐき)がかぶさっています。本来はみえていない部分である歯根の部分の治療を指します。虫歯が大きくなり、歯のなかにある神経(歯髄・しずい)まで達してしまうと、痛みが出るだけでなく、神経をとる治療をしないと症状が改善されません。
一般的な治療の流れは、一回目の処置は、麻酔をして神経を取る処置まで。2回目以降の治療を「歯の根の治療」と呼ぶことが多いです。歯根のなかにあった神経が入っている部分を「根管・こんかん」と呼びます。この部分は知覚を感じる神経と栄養を供給していた血液が流れていますので、薬剤の力と器械的な器具により神経をとる処置をするのですが、根管内部をきれいに清掃しないと、細菌の繁殖する場を提供することになってしまいます。また、人間の体は「死腔・しくう・デッドスペース」と呼ばれる隙間があると(本来ならば、なんらかの組織があった場所になにもなくなってしまった空間のこと)細菌があつまりやすくなる性質があります。つまり、歯根の中の根管も神経をとったあとに空っぽのままにしておくと細菌が繁殖してしまうことがあります。そのため隙間なく、薬剤を充填する処置「根管充填」という治療を行うのですが、その工程を、一般的に「根管治療・こんかんちりょう」歯の根の治療といいます。
また、神経をとる処置を過去にされた歯を「神経のない歯」と呼びますが、それを再治療する場合にも「歯の根の治療」といいます。
英語ではエンドドンティクスと呼び「エンド」「根治・こんち」などと歯科医院のなかでは言葉を使います。
歯の根の治療が必要な症状、状況は何でしょうか?
神経のある歯(天然歯・てんねんし)(生活歯・せいかつし)の場合は、虫歯ができて、主に冷たいものがしみる。何もしていなくても痛い、そして痛い場所がよくわからない。といった症状がでることが多く、これを「歯髄炎・しずいえん」を起こしている状況と呼びます。この場合、歯の根の治療が必要になります。
また神経のない歯(失活歯・しっかつし)の場合には病気の進行により、自覚症状はわかれますが、一般的には、かむとひびく、力が加わると痛い。といったように痛みの場所が明確にわかる場合が多いです。歯肉が腫れてくる場合もありますし、お顔まで腫れるケースもあります。またさらに進行し、慢性的な状態にまで至るとニキビのようなできものが歯肉に現れたり、つぶれたりを繰り返すケースもあります。歯根のまわりにある歯根膜という部分に炎症が波及すると、歯が浮いた感じがしたり、歯が動揺してきたりします。根の中に膿がたまっていると表現したり、レントゲン上でも透過像が根の周りに写ったりして視覚的にも病状がはっきりする場合があります。
歯科医院で行う治療も複数回通院する必要があり、治療期間が長期にわたる場合もあります。咬む、話をするとき、審美で重要となるのは歯冠部分のように思われがちですが、建物で基礎、土台部分が大事であるように、力が加わる歯も「歯根」の状態がとても大切です。みえない地味な治療なのですが、歯冠を支える土台となる歯根の治療はとても重要なのです。日本で行われている保険診療では、大切で難しい治療であるにもかかわらず、評価が低く算定点数が内容にみあっていないことは、歯科医師としてとても残念なことだと思います。