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バスケットボールの試合中に…
2023年9月10日
ワールドカップバスケットボールが沖縄で開催されて「あかつきジャパン」と話題になっていますね。見る専門ですが、私もバスケットボール大好きです。高校生のとき、体育の授業中にバスケットボールが顔面にぶつかり(苦笑)かなり痛い思いをした記憶があります。目にぶつかってしまったため、白目が充血し、視野が一時的におかしくなりましたが、眼科で異常がないことがわかり、事なきを得ました
さて、先日、当院に小さい時から通院しているお子さんが、バスケットボールの試合中に接触し、前歯を脱臼して来院されました。前歯が思いっきり内側に傾斜したとのことです。歯根の破折はなくいわゆる「脱臼」した状態です。身体の関節では「肩が脱臼した」「関節が脱臼した」などのように使うことば「脱臼」です。歯の場合には「歯牙脱臼」という病名になります。歯茎のところでプラプラしている、グラグラ動いている状態です。抜け落ちてしまった場合は「完全脱臼」となります。歯の根は歯根膜という組織で覆われ骨の中に存在しています。
まずは「歯牙脱臼」の場合ですが、本来、歯は骨の中に埋まっていますよね。歯の根の形にそった骨(歯槽骨)の中に埋まっています。歯根の形にそったソケットのような筒状の穴があいた部分が骨の中にあるイメージです。強い力が加わると周囲の骨が折れて、ソケットの形が崩れます。そうすると、歯根はぴったりしたソケットではなく、ゆるゆるのソケットのなかにいることになり、歯が別の場所に動いてしまうというメカニズムです。けが(打撲)のような一時的な衝撃が加わると、力が加わった方向の骨が壊れてしまい(折れること、歯槽骨骨折)、結果として歯の位置異常が起こる「脱臼」となります。周囲の骨の崩壊度合いにより、歯肉の中にとどまっていてくれる場合と、完全にゆるゆるで抜けてしまう場合で「亜脱臼」「完全脱臼」と呼び名(病名)が変わります。
一時的な強い力ではなく、持続的なゆるい力をかけると、歯が抜けることなく動きます。これを利用して歯を動かそうというのが「矯正治療」になります。ある一定の力以上のものがかかると、歯に病的な力となり、炎症を起こし、周囲の骨によくない問題を引き起こしていきます。これがくいしばり、歯ぎしりなどが歯にとってよくない力の代表ですね。
話を、ケガに戻します。脱臼をしているかいないかは「痛いか痛くないか」ではなく(お子さんにそのように聞いても、低年齢だと明確な答えは返ってきませんし、歯だけでなく、他もケガしている場合には、痛みの正確な情報は得られません。またぶつかったショックで呆然としていることが一番多いです。)歯茎をみてください。歯の周りの歯肉から出血しているかどうかをみます。表側も、みづらいですが裏側もみてください。出血していたら、程度の差はあれど脱臼しています。⇒早めに歯科へ
出血していなくても歯をぶつけている場合には、自己判断せず、早めに受診してほしいです。かみ合わせの関係や、食事などで強い力がその後加わると、後から痛みとなって現れたり、急に歯がぐらぐらしてくることもあるからです。
ぶつけた歯が大丈夫かどうかさわる場合には、そっとにしてください。元の場所に戻そうなどと強い力を加えると、本人が痛いだけでなく、再度、脱臼させることにつながり、歯の神経のダメージが大きくなってしまうからです。歯の位置が完全に変わってしまい、かみ合わせがおかしくなり、口が閉じられないケースも多々あります。強くかまないようにし、口を半開きの状態でもかまわないので、そのまま歯科へ行きましょう。
実際の治療では「麻酔」をして、痛みをとってから元の場所にもどす「整復」という処置を行い、周囲の歯を利用して「固定」をします。ギプスのようなものはお口の中にはつけられませんので、ワイヤーやグラスファイバーの入ったテープなどで脱臼した歯以外の健全な歯を固定源(アンカー)として、動かないように(再脱臼しないように)接着性の材料を用いて固定します。期間はお子さんの場合、最低3週間。できれば4週間。大人も4週間は最低固定しますが、状況により延長をします。けがの程度により異なるのです。身体のなかで修復がおこるのは、いわゆる切り傷がくっつくのに1週間。カッターなどで切った時を思いだしてください。表面の傷はわりと早くなおります。皮膚の下の組織が治るのにさらに2週間くらいを要します(+年齢)。歯肉は皮膚より早いので、3~4日で出血した部分や切れた部分などは治っていきますが、中はまだ健康な組織にはなっていません。骨を再生する細胞や、他の組織を再生させるためのものがたくさん出てきて一生けん命身体は治すための活動をしています。そのため、早い段階で、もう一度ぶつけてしまったり、外力が加わると、それを阻害してしまうので(そうはいっても、お口の中ですので、手足のようにギプスをはめて完全固定はできないわけです)生活に注意しながら3~4週間を過ごしてもらうことになります。
その後は固定をはずして、なにもしないで終わる場合、歯の神経の損傷があり、根の治療が必要になる場合など様々です。
一般的には、歯の神経のある歯の場合で年齢が若いと「脱臼」がおこりやすく、歯の神経のない歯や、年齢が成人を過ぎていると「歯根破折」といった歯が途中で折れるといった場合が多くなります。これは小児の方が骨が柔らかいためですね。骨折の治療法がこどもとおとなで違うことに共通します。
ケガをしないにこしたことはないので、接触プレーのあるスポーツは「マウスガード」が必要だと感じる次第です。小学生以下だと成長途中で作成してもすぐに合わなくなってしまうので、難しい面がありますが。少なくとも高校生以上になったら、バスケットボール、ラグビー、サッカー、ラクロスetcなどの競技をする方は必要なものだと思います。